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平成18年(行ウ)第124号 健康保険受給権請求事件
原 告 清郷 伸人
被 告 国
準 備 書 面 (2)
平成19年7月9日
東京地方裁判所民事第3部A係 御中
原 告 清郷 伸人
平成19年7月4日の第3回弁論において、被告は裁判長の「混合診療禁止の法的根拠は健康保険法のどこにあるか」という質問に、口頭で応答したが、それに関連して次のように明言した。
混合診療は保険医療機関で受ける保険医療と特定療養費(評価療養、選定療養等)にも認められていない保険外の医療を併用することだが、それぞれの受診月日を変えても医療機関が異なっても、同じ病気の治療が目的ならすべて混合診療に該当する。医療はひとつの病気に関する一連の行為ととらえられ、その流れに一つでも保険外治療が入ると、医療全体が保険給付対象とならなくなるとしている。その保険給付については患者の一部負担金を伴う医療の現物給付で、特定療養費については現物給付でなく金銭給付である。
これに対し原告は次のような疑問と反論を提出し、被告の回答を求める。
1. 混合診療禁止の医療制度によって、医療機関も患者も同じ病院での同時併用には萎縮しており、どうしてもという緊急ケースでは病名を変えるなどの改ざんで犯罪行為に追い込まれていると聞く。では国のいうように混合診療として保険外医療を後日、他の医療機関であるいは医療機関ではない所で、同じ病気の治療目的で行ったことを保険当局はどのようにして把握するのか。自由診療を行ったことを保険外医療機関や患者がわざわざ患者の保険給付がまったくなくなることを承知の上で必ず申告するのか。
2. 混合診療を必要とする患者は風邪など急性期医療よりは、がんなど慢性期の難病患者である。このような病気は何年もかかる。保険医療が効を奏さなかったり、次第に悪化するものも多い。それまでは保険治療だけだったが、3年後、4年後に保険外治療を受けることは十分ありうる。この場合、それまで受けてきた保険給付がすべて取り消されることになるのか。また何年後のものは時効になるというような規定があるのか。
3. 国は健康保険は現物給付だといっているが、後日行った混合診療で保険給付を取り消され、患者や医療機関が受けた給付を返還しなければならない時、どうするのか。飲んだ薬を返すのか、受けたCTや血液検査はどのように返すのか。患者は金銭でなく現物を国から給付されたわけだから、返還を金銭で求められる道理はない。
4. 被告は何人もの専門弁護士がおり、十分時間ももらいながら2度も3度も何故裁判長からの法的根拠という同じ質問に対する準備書面の書き直しを求められるのか。裁判長の疑問や求めはきわめて当然であるが、国の医療政策の根本制度なのだから日ごろ根拠が明確に認識されているはずであり、一度で済む回答ができるはずである。何度も書き直しを求められるのは無理やりこじつけて創作する以外に法的根拠を示せないからで、そのため何ヶ月も無駄な時間を要していると思うがいかがか。
とくに上記1で提示した疑問については、私が保険給付当局の担当者に確認したが、自由診療についてはいつどこで行われようと医療機関と患者の私契約であり、届出の義務もなくまったく把握できないといっていた。当然のことで、届け出るような不合理、不可解な行動を病院や患者が取ることはありえない。したがって混合診療とは同じ保険医療機関で同時に保険外治療を行った場合(それは結構多いと推察する)と普通は認識されている。この場合でも、病院は研究費等で患者の保険外治療分の治療費を肩代わりするなどして患者から保険外治療費を徴収しないようにしており、もちろん保険給付が全滅する混合診療を行ったことを保険当局にわざわざ申告するはずがない。
このように今の制度が厚生労働省の主張する政策目的を実質的に果たしているとは到底いえないが、なぜ政策として機能しておらず、法的根拠も持たない混合診療禁止制度を国は手放さないのか。それは別の隠れた目的があるからである。高度な先進医療とあまり縁のない開業医の団体である医師会はもちろん自分たちの利益に反する混合診療に反対だが、国も保険医、保険医療機関の許認可権限を維持、強化するなど官の権力を保持したい。混合診療禁止のお触れは実際に摘発、加罰する機能が弱くとも、張子の虎として全国の医者へニラミが効いていればいいのである。実際医療の現場ではこの恫喝は強烈で医者は口々に、どんなに良いと思っても保険外治療はできませんと萎縮しきっている。甚大な被害をこうむっているのは難病の患者である。
私には国がこのように仕組んでいる混合診療禁止制度は根本から不合理で、健康保険を柱とする国民皆保険の中にあてはめることはどだい無理だと思う。国はそのことを半分は承知していると考える。だから混合診療禁止を健康保険法の中に明文化したくてもできないのである。そして保険当局だけで勝手な反対解釈を行って運用し、医療制度をいじくりまわしているのである。7月4日付けの準備書面(2)には被告の政策合理性がるる述べられているが、実体は以上のように合理性とはほど遠い欺瞞に満ちたものである。
なお上記に述べたように混合診療は医療現場の実態としてはもっぱら同じ保険医療機関で同時に行う保険外治療の併用を意味しているが、国のいうように概念としては違う日の違う医療機関での保険外治療も該当するとすれば、私が混合診療禁止制度の違憲性の根拠としている不平等について、比較対象が今のままでは論理矛盾になるのであればそれを変える必要が出てくる。すなわち保険外治療を同じ所で同時に受けて保険受給権を剥奪される患者と同じ治療を違う日、違う所で受けて剥奪されない患者との不平等ではなく、同じ保険料を負担して何の落ち度もないのに保険外治療を受けたか否かの差だけで保険受給権を剥奪される混合診療の患者と保障される患者との不平等である。
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